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主任警部モースS8E5【悔恨の日】

シーズン8エピソード5【悔恨の日】のあらすじ&最後までのネタバレです。

とうとう、この日がやってきました。主任警部モースの最終回です。
もうこの前書きで何を書いていいのか分からないくらい複雑な気持ちになっていて、楽しみと寂しさと、得も言われぬ気持ちがぐるぐるしています。

感想は、いつものことながら、とても長いです。
===

ルイスはストレンジの執務室に呼び出された。用件は、一年前に発生し迷宮入りとなったイボンヌ・ハリスン殺人事件に関する事だった。
匿名の投書があり、刑務所から出所するハリー・レップという男を捜査しろと書かれていた。
ストレンジから指示を受けたルイスは、彼を尾行することに決める。
イボンヌは看護師をしており、何者かによって手を縛られて裸で撲殺されていた。モースが担当していた事件だったが、その凄惨な現場から、ストレンジがモースを気遣い、担当から外していた。

自宅でバードウォッチングするモースに呼び出されたルイス。
モースもまたイボンヌ事件のことが気になっていた。モースから事件を引き継いだルイスは、匿名の投書のこと、そしてハリーという窃盗犯を追尾することを報告した。

翌日、刑務所を出たハリーを尾行したルイスだったがバスの乗り継ぎの時間、売店に立ち寄っている間にハリーを見失ってしまう。
職場復帰したモースは、ルイスが追いかけていたハリーを自分も尾行していたと言った。そしてルイスと同様に、バス停でトイレに行っている間に見過ごしてしまったと話すが、ルイスは自分の事件に首を突っ込まれて気分を害し、モースに対して声を荒げた。

ルイスはミスを挽回すべく、ハリーの自宅を訪ねて、妻に話を聞いたが彼は帰宅していなかった。
彼が殺人事件に関わっているということをほのめかすと、同じようなことを昨晩モースに話したと言う。それを聞いたルイスは頭に血が上る。
モースは持病の糖尿病の診察で病院を訪れていた。体調は芳しくなく、医師のサンドラからも酒を控えるようにと忠告された。
サンドラは、イボンヌの娘だった。親子そろって美人だとモースは彼女を褒めるが、彼女はいい顔をしなかった。

病院の外で待っていたルイスはモースに突っかかった。
「どこまで私を愚弄すれば済むんですか!」
そう言うルイスに対し、モースは謝った。
「ハリーはきっと自分の身の危険を感じていた。だから匿名の投書をして、身を守ろうとしたんだろう」
モースはパブで(医師に止められているにも関わらず)ビールを飲んだ。元気のないモースを気遣うルイス。遠くに沈む夕日を見ていると、モースは詩の一節を口にした。

翌日、ごみ処理場で男の刺殺体が見つかった。ハリーの遺体かと思われたが、見つかったのはフリンというタクシー運転手だった。
彼はイボンヌ事件の関係者だった。事件当日、イボンヌの夫を駅から自宅まで送り届けたタクシー運転手だった。
ホブソン医師によれば死後一日で、別の場所で殺されたということまでしか解剖前では分からないらしい。
その後、別の場所でハリーの遺体も見つかった。それは、ルイスとモースがハリーを尾行していた時に見かけた不審な盗難車のトランクの中からだった。

「ハリーが殺されたのは、フリンのあとだろう。フリンの遺体をゴミ処理場へ持っていき、遺棄するには二人分の力が必要だ」
トランクの中で見つかったハリーの方は、一人の力でも遺体の移動が可能だろうとモースは推理した。
イボンヌ事件の時のフリンの証言を思い出していたモース。なにかしっくりこないものを感じていた。
「イボンヌ事件の時、夫のアリバイの証言が、あまりにも出来すぎていた。そこがかえって怪しく思える」
さらに、事件当時、現場に駆け付けた警察が耳にした防犯ベル。30分で自動的に切れる仕組みになっていたはずで、彼女が死亡したのも同じ時刻だろうと思われたが、彼女の遺体は死後二時間は経過しているとホブソンは検死していた。モースはタイムラグがあることも気になっていた。

モースはその後、ハリーの妻に夫の死を伝えに行き、ルイスはフリンの自宅の捜索に。
夜になり、テムズヴァレー署へと戻ってきたルイスは、モースにフリンの家で見つけた札束の入ったカバンを見せる。
イボンヌ事件からの一年間、彼は毎月定額を何者かからもらっていた。ルイスは誰かを強請っていたのではないかと考えるはモースは否定的だった。
イボンヌの遺体が見つかったのは23時頃。夫のフランク・ハリスンが戻ってきて発見したが、ホブソンの検死では死亡は21時過ぎ。
「バロンという大工が、21時に彼女に修繕見積もりの電話を掛けたという証言が残っています。通話中だったそうですが」
その名前を聞いたモースは気になった。彼はハリーの家の修繕にもあたっていたのだ。イボンヌ事件ともかかわりがあるのではないかとにらむが、突然痛みに襲われてルイスの目の前で、苦悶する。

翌朝、老婦人の家の修繕に向かったバロンが何者かに殺される。婦人の話によれば、近所をジョギングしていた人物がいたので、その人なら事件の仔細が分かるのではないかということだった。
ルイスはバロンの車を漁り、ハリーやフリンを殺したものと同形状のカッターを発見する。
「バロンとハリー、フリンは強請りの仲間だったのかもしれません」
ルイスの推理を褒めるモース。三人はイボンヌ殺しに真犯人を強請っていたが、仲間われて殺し合いに発展したのではないかと考える。
となるとバロンは事故なのか、殺しなのかをはっきりさせなければならなくなり、目撃者捜しが行われる。

モースはバロンが亡くなったことをイボンヌの娘サンドラに話しに行く。
彼女はバロンが亡くなった時刻は病院に居たと証言し、ほかの家族のアリバイは分からないと答える。
モースは次に弟のサイモンに会いに行った。彼は朝から一人でバードウォッチングに行っていたと答え、アリバイがはっきりしない。
一方のルイスはフランクのアリバイ確認に行ったが、そちらは確固たるアリバイがあった。

目撃者探しの新聞記事が載り、街の不用品回収店からの連絡が入った。
店主によると、今朝方、バロンの事件があった時に目撃されたジョガーの服装と同じものが店先に置かれていたのだという。
置いて行った人物の乗る車のナンバーを記憶していた店主の証言から、おいていったのがサイモンであることが判明。モースは彼のアリバイ証言の中に付け焼刃の知識による間違いがあることにも気づいた。
サイモンの営む本屋へと向かったモースとルイス。そしてサイモンは逮捕されるが、黙秘権を行使する。
そこへロイという少年が自首してくる。ルイスが事情を聞き、彼は自転車の曲乗りをしていて誤ってはしごにぶつかってしまったと証言した。
同じころ、モースの取り調べに対し、サイモンは証言を始める。
「私はバロンを監視していました。そして自転車に乗った少年がはしごにぶつかって倒しているのを目撃しました」
証言の一致から、サイモンは釈放されることに。
モースはストレンジから呼び出され、捜査の進捗に関して発破をかけられた。

その後、イボンヌ殺しの本星を探すため、バロンの車から見つかった仕事道具の中でイボンヌ殺しの凶器に合致するものがないかを調べる。
ホブソンに意見を聞きに行くが、彼女も断定はできないと答えた。
体調がよくなさそうなモースを心配するルイス。ホブソンはおそらくかなり調子は良くないだろうと答え、ルイスは眉尻を下げた。

モースは自分の死期が近いことを覚り、遺言書と作成。若手音楽家基金、愛しいアデル、そしてルイスの三人に遺産を遺し、遺体は献体したいと弁護士に伝えた。

バロンの葬儀が営まれた。小さな村の大工だった彼を偲んで大勢が集まり、そこにはフランクやサンドラ、フリンの別れた妻も参列していた。
彼女に話を聞くと、フリンは耳が悪く、タクシー会社をクビになっていたという。サイモンもまた難聴を患っており、フリンとは読唇術のクラスで顔見知りだったと証言した。
モースはフリンの難聴のことが気になった。彼がフランクを家に送り届けた夜、家の防犯ベルが鳴っていたのか、鳴っていないのか。フリンはそれを聞きとることができないほど、耳が悪かったのか。
バロンの妻にも話を聞くと、バロンの浮気には気づいていたらしい。それでも夫を愛していたのだと彼女は言う。

その後、ささやかな食事会が開かれて、モースもルイスとともに出席した。
モースはハリーの妻との話が盛り上がっていた。その様子を遠くから見守るルイス。そこへ料理屋の店主がやってきて、ルイスに忠告した。
「あの女は恐ろしいぞ。バロンも食い物にしていたからな。あの陽気なバロンが、あの女に振り回されて胃潰瘍を患ったくらいだ」
それを聞いたルイスは、バロンが胃潰瘍になってどの病院に運ばれたのか尋ねた。すると店主はラドクリフ病院だと答える。
それは、サンドラや、亡くなったイボンヌが勤めていた病院だった。

ハリーの妻から、バロン、ハリー、フリンの三人がイボンヌ殺しの真犯人に気づき、その人物を強請って金を巻き上げていたことを訊き出したが、真犯人はまだ分からぬまま。
モースは、ロイに会いに行く。麻薬に手を染めるロイを叱責したモースは、もっと自分の人生を大切にするように忠告するが、ロイは帰っていくモースに不敵な笑みを浮かべた。

その後、モースは病院へとサンドラに会いに行くが、彼女はカナダへ向かうために荷造りをしていた。
「あなた、バロンとは顔見知り以上の関係だったようですね」
モースはそう尋ねたが、サンドラはそれを否定。バロンが通院していた期間と、自分が勤めている期間に重なりはないと言い、イボンヌが死んだ時も自分は骨折していて歩けなかったと答え、モースは閉口した。
モースはその足で、病院の院長ライオネルが参加している教会での音楽会へと向かった。
イボンヌと関係を持っていたライオネルに、彼女のことを尋ねてみると、彼女はモースと関係を持っていることを院長にも話していたようだった。
「彼女は非常に明け透けな人だった。楽しい時間だったよ。ただ、夫のフランクがよその女に産ませたロイという男の子のことをとても気にしていたようだった」
それを聞いたモースは事件の糸口を見つけた。

その頃、ルイスはストレンジから呼び出しを受け、ある手紙を渡された。それは、イボンヌの寝室で見つかった、彼女に宛てたモースからのラブレターだった。
「警察官としての規則を破ってでも、同僚であり、友人を守りたかったが、君には見せようと思う。あとはどうするか、君が決めてくれ」
手紙を受け取ったルイスはその中身に静かに目を通していた。
そんな時、モースから電話が鳴り、ロイを捜査妨害で連行するように指示を受けた。
電話を切ったモースはその場で倒れこむ。心臓発作だった。
救急搬送されたモースは、もうろうとした意識の下、病院の廊下で骨折した老人が松葉づえをついているのを見て、事件の真相にたどり着く。
事件当時、サンドラは骨折をしていたが、彼女は持っていた松葉づえでイボンヌを撲殺したのだと分かったのだ。

その日は何とか持ちこたえ、ルイスとストレンジも病院へと駆け付けた。モースの心臓はボロボロだった。
「どうして一年半前に吐血した時、無理やりにでも引退させなかったんだろうか」
後悔するストレンジに対し、ルイスは言った。
「警部は怖かったんですよ。「ただの人」になることが」
そう言って、ルイスはストレンジから渡されたイボンヌへのラブレターを返却した。
「どうして警部は私にそれ(手紙のこと)を教えてくれなかったんでしょうか」
「アイツはプライドの塊だ。君にイボンヌとのことが知れて、軽蔑されるのが怖かったんだよ」

医師から数分だけならと言われ、モースのそばに寄り添ったルイス。
ラブレターのことを聞こうとするルイスを制止して、事件の進捗を確認するモース。ルイスは、ロイが全面自供し、父親から金の援助を受けながら、バロンの監視や身代わりの出頭を引き受けたと証言していることをモースに伝えた。
サイモンとフランクは直に逮捕されるとルイスが言うと、サンドラがイボンヌを殺したのだとモースは言った。松葉づえが凶器だと伝え、慌てて彼女の行方を追い、カナダ行きの飛行機に乗る間際だと知る。
モースのことが気になるルイスだが、あとは任せろとストレンジに背中を押され、空港へと向かうことに。

ストレンジはモースのラブレターを破り捨てた。背後で、眠っていたモースが目を覚まし、何かうわごとを呟く。
ストレンジが駆け寄ると、切れ切れの声でモースは言った。
「ルイスに、ありがとう……と」
その言葉を振り絞ったモースの心臓は、ついに動きを止めた。

サイモン、フランク、サンドラは逮捕される。サンドラはカナダへと出発するギリギリだった。
「バロンに夢中だったわ。母が殺された日、私はバロンと会う約束をしていた。でも仕事で会えないと言われ、調べてみると私の実家に居ることが分かった。行ってみると、バロンは居なかったけど、裸の母が。腹が立って杖で殴り殺したわ」
その後、父のフランクに連絡し、空き巣に見せかけて現場を偽装。フリンやバロン、ハリーに現場を目撃され、強請られていた。
「父は銀の食器まで売って金を工面したわ。あなたにはこの苦しみは分からないでしょうね!」
「ええ、わかりません」
「でもモースなら分かるはずだわ」
「……そのモース主任警部は亡くなった!!」
目を真っ赤にしたルイスは大声でそう告げる。

病院で、冷たくなったモースと対面したルイス。そっとこめかみに口づけを落としたあとで、モースに別れを告げた。
「さようなら、警部」
ルイスはそう言ってその場をあとにする。朝靄に包まれたオックスフォードの街は、とても静かで幻想的だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ふう………しばらく言葉が浮かばない気持ちです。

さて、感想をまとめていきます。まずはライトな部分から。
ルイスが老けていましたね。警部コースという管理職講習?を受けて、早く警部になりたいようですが、席が空かないので昇進はできぬまま。
「モース(の席)はどうなんです?」と聞いちゃうルイスにちょっと驚きました。出世の方が優先なんでしょうかね?ショック( ;∀;)
ただ、ラストまで観たあとで気づきます。このシーンがあったからこそ、ラストでとても感傷的になれるんです。
ルイスも昇進を目の前にして、人が変わってしまったんじゃないか……特に前回は出演がありませんでしたので、余計にルイスという人物が遠く感じられていました。
私が好きだった、モースの良き相棒で、心の支えだったルイスはどこかへ行ってしまったんじゃないかと不安になるくらい。
でも、ルイスの根っこは何も変わっていなかったんですね。

というわけで、語りたいことはめちゃくちゃあるんですけれど、いったん事件のお話に。
今回はめちゃくちゃ人が死にましたね~最後に三人も殺されるとは。イボンヌも含めると四人なんですが。
冒頭部分はイボンヌの事件が描かれていた、事件のシーン(というより、おばさまの魅惑の誘惑シーン(かなりまろやかな表現にしております)が頭にこびりついて、何を見せられているのだろうと困惑しましたね。
まさかモースがその誘惑に堕ちて、イボンヌと関係していたことには驚きましたが。

看護師さんって「白衣の天使」と言いますが、たぶんモースにとってイボンヌは「ただの遊び相手」ではなかったんだろうと思います。心身ともにぼろぼろになったモースにとって、イボンヌとのふれあいは救いになったんじゃないかと。
アデルという恋人が、オーストラリアで永住することを決めてしまって寂しかったんじゃないかな。もちろん彼女への愛情はあったけれど、モースはオックスフォードからは離れられない。それくらい、オックスフォードを愛していたし、モース自身は環境を変えることに臆病になりがちだと思うので……
あ~もしアデルと一緒にオーストラリアで隠居していたら、少しは長生きできたのかなとか思ってしまいます。

ただイボンヌの方は、モースとの関係はたんなる快楽のためだったんでしょうけれど。
健康な人間はそうですよね。院長もそうです、快楽主義だったんだろうなあ。
モースのラブレターの内容を知って、余計にそう思いました。モースは縋りたかったんじゃないかなあ。救いが欲しかったのではないかと。

モースが半分隠居生活をしつつ、バードウォッチングしていたのは可愛かったな~ただ、あまり取りに関する知識はなさそうでw
ルイスに「あれはどこにでもいる雀ですよ」と言われていましたね。最終回と言うこともあり、モースも元気はないし、ルイスともあまり穏やかではない始まりで、くすっと来るシーンが本当に少なくて、苦しい連続でしたが、このシーンはほっこりしました。

ルイスとの険悪ムード全開だった序盤は悶々としつつ観ていました。
ハリーを見失ってしまったことを責めるつもりはないのに、イライラしているからルイスも過敏になっちゃってモースにきつく当たっていましたね。本当はモースの体調のことが心配だけど、カリカリモードでした。
でもやっぱり言えるのは、モースの着眼点だけでなくルイスの視点もあるから、事件が進んでいくということなんですよね。
最初のシーズンから比べると、ルイスはとても成長していました(またここでしんみり)

それにしても、殺された三人(イボンヌを入れると四人)のうち二人は、仲間割れだというのは驚き。
そして色男バロンがかなりヤバイ奴だったことにも驚き。てか事件のあった集落の男女関係は入り組みすぎてて大変w
さらに、それがほとんど周囲にバレているっていう状況も驚きでした。いや~色欲って恐ろしい。羞恥心はないのか!
イボンヌがどうしょうもない色欲お化けだったのは、確かに娘からすると嫌だったのかな。まして自分の彼氏を寝取られるってのはプライドも許せなかっただろうし。
だけど、夫も夫でよその女に子ども生ませて、ひそかに育てているって展開も凄いよな……ロイ!妾の子だったんかい!と思わずツッコみました。
サイモンはイボンヌのことが好きだったようですが、やっぱり息子はママが好きなんだなあ。母を殺したサンドラにきつく当たっていました。

あらすじには書きませんでしたが、家族三人でレストランで食事をする場面がありました。
そこで「やるしかない。覚悟を決めろ」という話をしていたんですが、バロンを殺す計画について話していたようです。レストランでそんな物騒な話をするなよ、っていうかもっと秘密裡にしろよ、と大声ツッコミです。危機意識なさすぎでしょうよ

イボンヌが院長のライオネルにモースとの関係をべらべらしゃべっているのもなかなかの衝撃でしたが、結果として、院長の証言が事件の突破口になりました。あそこでロイのことを訊き出せなければ、迷宮入りでしたしね。だから、ライオネルは許しましょう!(誰)

ううう、そしてモースの最期です。最後の最後まで、モースは事件解決に執念をもやしていました。
虚ろな視界の中、松葉づえが凶器だと気付いたのはさすがです。

病院に駆け付けたストレンジとルイスがラブレターのことでやり取りをするシーン。
「ルイスに軽蔑されたくないと思っていたから、ラブレターのことは言わなかったのだろう」とストレンジはルイスに言っていましたね。
ストレンジは規則を破ってでもモースの名誉を守ろうとしたと語っていました。
若モースを視聴しているので、モースとストレンジの腐れ縁は少し理解しているのですが、ルイスとのとは違う絆が二人にはあるんですよね。立場は大きく差がありますが、重ねてきた時間は長くて、大切な友なんですね。
ストレンジの口からモースへのストレートな気持ちが聞けて、そこでもグッときました。

ルイスはラブレターを読んで何を感じたんだろう。多分、モースが恐れていたような軽蔑ではないと思うんです。わかんないですけどね。
一年前、事件が起きた時に読んでいたら、軽蔑していたかもしれません。でも弱り切ったモースを見ている今なら、違ったんじゃないかな。
ラブレターから読み取ったのは、イボンヌへの慕情ではなくて、モースの心のささくれだったんじゃないかなあ。弱り切って、生気が薄らいでいるモースの苦しみを感じたんじゃないかと私は思いました。

サンドラ逮捕に向けて空港へ出発したルイスですが、モースの死に目に会えなかったのはつらかったんだろうなと、安っぽい言葉しか出てこないんですけれど、そう思うと涙が出てしまう。
サンドラは色欲におぼれた母を撲殺して現場を偽装。家族総出で警察を欺き、海外逃亡を図ろうとしていた。彼女はパトカーの迎えがくるまでの間、ルイスに事件のあらましをペラペラと話します。
それに対し、ルイスは一度制止して「黙秘権を行使してもいいんですよ」と言いました。それは一般的な「逮捕時の権利の説明」ではないと思います。
むしろ、黙っていてほしかったんだろうなと。
彼女が殺したのは、一瞬でもモースの心を身体を癒したイボンヌという女性。この殺人はモースが命をすり減らして解決しようとした事件。
サンドラ逮捕前にモースの死を知らされたルイスは、事件のあらましも、サンドラのイボンヌへの誹謗も聴きたくなかったんじゃないかなって。
ああ……もうそう思うと、ルイスの、涙をためた顔がよみがえって辛いです。

少し気分を変えて、音楽の話でも。
今回、いつにもまして、音楽が効果的に使われていたのではないかと感じました。
グリーグのペールギュント第一組曲が流れていましたね。「朝」で有名なやつです。個人的には第一組曲のラストの魔王の城?が好き。弾いていてテンションが上がる曲です。
第一組曲の方が聞きなじみがある曲が多いと思いますが、ぜひ第二組曲も聴いてみてください。なかなかハードでダークです。
モースはバードウォッチングしながら、グリーグを聞いていました。なんだか意外です、グリーグも聴くんだなあって。モーツアルトかワーグナーかみたいな「軽いか」「重いか」の両極端かと思っていたので。

そして序盤?中盤?では、シューベルトの弦楽五重奏C-durが流れていました。弦楽五重奏と言っても、コントラバスはないんですけどね。私の楽器も仲間に入れてくれ~~!ただチェロが2本にヴィオラ、という中低弦3本体制なので、バランスはいいんですけど!!
そして三大レクイエムの一つ、フォーレのレクイエムも流れておりました。レクイエムで一番好きなのは劇的なヴェルディか、ブラームスのドイレクですけれども……
ライオネルの歌唱シーンもそうですが、レクイエムが何度か流れて、モースの死を予感させていましたね。音楽の演出も絶妙でした。

モースのドラマを観ていく中で、クラシック音楽のことがまた一段と好きになりました。モースが知識豊富だということもあるのですが、音楽で情景を描く魅力に気づかされたと言いますか。
今回のエピソードの中で、モースは「ワーグナーは聴くべきだ」とルイスに言っています。私はワーグナーはあまり聴かない派でしたけれど、聴いてみようかなと思いました。
エピソード内でこんなふうにモースは言っていました。
「ワーグナーだけは聴いた方がいい。ワーグナーには人生のすべてがある。生と死、後悔……」
なにもワーグナーという作曲家に限ったことではないと思いますが(すいません)音楽も文学も美術も、人間の感情や思考を具現化する手段であって、モースはその多くをワーグナーの音楽から感じ取ったんだろうなと、この発言から感じました。

そんなルイスとの会話の中で、もう一つ、詩の一節を口にしていました。夕日を見ながらのシーンです。
「大空を血に染めながら苦しげに太陽は沈む。遥か彼方西へ。触れることも見ることも聴くことも叶わぬ深き闇の中。
悔恨の日は望みなき地下へ。ただひたすらに落ちていく」
"Ensanguining the skies How heavily it dies Into the west away;
Past touch and sight and sound Not further to be found, How hopeless under ground Falls the remorseful day."
Wikipediaからの抜粋です(いつもお世話になっております)エドワード・ハウスマンという詩人の詩の一節だそうです。
どういう意味なんでしょうね。私はこの日本語の訳文だけと読む限り、少し前向きな気持ちになってしまいました。絶対に解釈違いだと思うのですが。
太陽は沈んでいく、悔恨の日を巻き込んで。手の届かない、自分の知りようのない地下の深くへと。
苦しみの日々は自分の手の届かないところへと堕ちて行って……(=次にはまた新しい一日が夜明けとともに訪れる)と私は思ってしまいました。
それは私がまだ若造だからでしょうか。人生の酸いも甘いも経験し、自分の死期を悟ったモースにはそういう意味ではなかったのかもしれないと書きながら思いました。

そして、このエピソードでもう一つ意味をなしていたのがワーグナーの「パルジファル」です。序曲と前奏曲が流れていました。
パルジファル【Wikipedia】
弦16型の、管は各3人、バンダに、ティンパニ2台の大所帯編成でワーグナー感満載ですね……wコントラバスはどんなに頑張っても聞こえないのでは……?笑

最後のシーンで流れた第一幕の前奏曲に関する記述をコピペします。

“『ローエングリン』前奏曲がイ長調であるのに対し、『パルジファル』前奏曲がそれより半音低い変イ長調で書かれていることも、より柔らかい、くぐもったような雰囲気を表出することに役立っていると考えられる。曲は次第に重苦しくなっていくが、やがて「聖杯の動機」が希望を示すかのように繰り返され、第1幕へとつながっている。”

パルジファルは第三幕で、苦しみに喘ぐ国王を救い、呪いにかかった女を解放します。聖なる力が皆を癒すわけですが、モースの最期に「希望」は示されたんでしょうか。救済はあったのでしょうか。
モースは信心深い人間ではなかったように記憶しています。葬式もあげないでくれと弁護士に言っていましたし。
だからこそ、モースが最期に発した、ルイスへの感謝の言葉の重みが一段と際立ちます。
モースの脳裏には何が見えていたのか。死に際に浮かんだのが、ルイスへの気持ちだっただけで、私は泣きました。
モースにとってルイスは、苦しみから解き放ってくれるパルジファルだったのかもしれないです。
もちろんルイスのすべてがそうだとは思いませんが、美味しいビールを飲んだり、冗談を言い合ったり、苦楽を共にし、時に厳しい言葉を掛けあいながらも、互いに敬愛しあえる「かけがえのない存在」だったことに異論はないと思います。

最後の最後、モースの遺体と対面するルイスの表情は、暗い室内で影を落としており、ほとんど見えませんでした。
口づけした口唇音だけがはっきりと聞こえたくらいです。だからこそ、ルイスの心情に視聴者が移入できたのではないかと感じました。素晴らしい描き方だと思います。

感想も締めに入ろうかな。
観始めたときは、こんなにこの作品のことを好きになるとは思いませんでした。本当に、不思議なものです。
もう一度、一話から見直したい気持ち。ルイスのことが大好きで、モースは気難しいおっさんだと思っていましたが、ドラマを通じてモースという刑事の人生を追いかけてきた気分で、モースの人間性に魅力を感じました。
好きとか嫌いとかではないし、感情移入もしないんですけれど、モースという人間を知りたくなるし、惹きつけられる。人気の理由が分かった気がします。
今度はもっと、モースの心情変化に重きを置いて、エピソードを楽しみたいなと思います。音楽にももっと細かく注意を払いたい。
モース、ルイスというキャラクターがとても愛おしい。ジョン・ソウさんとケヴィン・ウェイトリーさんがとても愛おしい。
書きたいことが山積していて、うまく言葉にできません。今は、それだけしか言えないですね。

ここまで読んでいただきありがとうございました(^^)

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ちゃんこい
Posted byちゃんこい

Comments 3

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S・H

ついに、この回が来てしまいましたね…。
結末を知っていたとはいえ、かなり衝撃的なラストでした。ある意味、「そこで終わるのか」と言いたくなるほどのラストシーンでしたよ。
見ていて辛い回でした。モースが「最期」に向かっていること自体がテーマとなっていて、体調が悪いモースの様子をハラハラしながら見守っている感じ。少し疲れました。そして、事件そのものの印象が薄い(ブログ読むまで既に概要を忘れてしまっていました笑)。
この回が放送された1年3カ月後には主演のソウさんも亡くなってしまうので、本当に体調が悪かったのではないか、と思うほどでした。
なんというか、モースロスです。
いずれにしても、「モース」シリーズを完投しました。とても楽しめました。このシリーズのガイドブック的な洋書も買ってしまいました。
私の中のベストは第5シーズン1作目の「メアリーラプスレイに起こったこと」です。
次点が第4シーズン最後の「魔笛」か、第5シーズン最後のオーストラリア編かな~。
シリーズ中盤が充実していたんですかね。第7シーズンの「アヴリルの昏睡」も良かった。
ワーストは圧倒的に第5シーズン2作目「ファットチャンス」!(笑)
もう一度、1作目から見たくなりました。
でも個人的には、やはり「ルイス」シリーズから入ってしまったからか、「ルイス」シリーズの方が好みなんですよ。
モースよりも、ルイスの方に感情移入しながら見ているからなのではないかと思います。
超個性派、型破りなモースに比べればルイスの方が〝普通の人〟だし、優しい人ですよね。
しかも、相当優秀で先輩の危機を救いまくっている。こんな理想的な部下はいないでしょう。
その優しさと優秀さは、「ルイス」シリーズでも生きています。「モース」を見ると、「ルイス」シリーズもまた味わいが変わって見えてきます。
しばらく、この2シリーズを見続けていくのかなと思います。
「若モース」まで手を伸ばしちゃうと余裕がなさそうなので、まだ先かな…。
ちゃんこいさんのブログも、見つけることが出来て良かったです。感受性が豊かでいらっしゃるので、私が気づかないところまで気づいていて、鋭いです!!いろいろ勉強にもなります。
「モース」は終わってしまいましたが、別の作品のブログもちょいちょいのぞこうと思います(笑)
「コロンボ」はたまにAXNで見たりしているので、また書き込みするかも。
よろしくお願いします!

2020/12/15 (Tue) 22:57
ちゃんこい

ちゃんこい

Re: タイトルなし

S・Hさん!ご無沙汰しております。すっかり返信遅くなってしまい、ごめんなさい!
モースが終わってしまった寂しさとともに年末を迎え、すっかりばたばたで生きていました……
そしてある意味「やり切った感」と得てしまい、あれから少し海外ドラマから離れていました。

主任警部モースという作品のタイトルこそ知ってはいましたが、どうして本国ではホームズより人気があるんだろう?と思ってしまう最初のシーズン。全然モースのことを好きになれないまま終わった気がします。
ルイスという一筋の光(という名の癒し)を見つけて、ようやく楽しめるようになったシーズン2。いつの間にか、クラシックオタクの偏屈ジジイに夢中になっていました。
最後、モースの命の灯が消えかかっていく中で、どんどんと苦しくなり、なんて不器用な人なんだろうと思うと、泣いてしまいましたね。
言葉にすればコミュニケーションが容易いのかもしれませんが、それがすべてではないし、ルイスやストレンジとの間にある信頼と遠慮のバランスが、とっても愛おしく思いました。不器用だから、モースは愛されるのかなと。
そして、主演のジョン・ソウさんがすでに鬼籍に入られているという現実が「もうこれ以上は続かない物語」というのをより一層際立たせていると言いますか……余計に寂しく思ってしまいますね。

ルイス警部も今年はぜひ視聴したいと思っています。まずはAXNミステリーに入らなきゃ!
モースが終わってもルイス警部があると思うと、少し前向きになれますね。更新ペースは落ちてしまいますが、ブログは継続していきます。
S・Hさんのコメントがあったので、私も楽しくブログを続けていくことができました(*'ω'*)ありがとうございます。

またいつでもいらしてください!今年もよろしくお願いします^^

2021/01/21 (Thu) 00:23
ちゃんこい

ちゃんこい

Re: Re: タイトルなし

ちなみに私のお気に入りは「魔笛」「約束の地」「イタリアの事件」ですね(^^♪
事件の内容の面白さ&モースがルイスにデレデレ?するシーンが多かったので。
滅多なことでは褒めたり優しい言葉を掛けたりしないモースが、邪な気持ち(昇任してほしくないとか、ほかの警部の補佐についてほしくないとか)なしでルイスと向き合っているのが大好きです!(^^)!

2021/01/21 (Thu) 00:29